発想力をアップする方法1【発想の切り口を増やす】
発想力とは
発想力とは何でしょうか?
言葉の意味を考えるときは、分けて考えるとわかりやすいです。(発明原理01「分割」の応用です。)
発想力を、発想と力に分けて考えます。
発想には、次のような意味があります。
- 考え出す
- 思いつく
- 想像する
力については、「〇〇力」と表現される場合には、次のような意味になります。
- 〇〇する(できる)能力
「発想力」という1つの言葉を、「発想」と「力」の2つに分けて(分割して)考えました。
次は分けたものを組み合わせましょう。(発明原理05「組み合わせ」の応用です。)
そうすると「発想力」とは、次のような意味になります。
- 考え出す能力
- 思いつく能力
- 想像する能力
このような意味での発想力は、仕事や勉強を行うために必要な能力といえます。そして、発想力をアップすることは、仕事や勉強の効率アップにつながります。
ではどうすれば、発想力をアップすることができるでしょうか?
発想力をアップする方法
発想力をアップする方法として、次の2つの方法があります。
- 発想の切り口を増やす
- 視点を変える
「発想力をアップする方法」の第1回目は、「発想の切り口を増やす」について説明します。「発想の切り口」とは何か、どうすれば増やせるか、について考えます。
発想の切り口を増やす
まず切り口の意味から考えましょう。切り口とは、「物を切った面」つまり「切断面」のことです。さらには次のような意味もあります。
- 切り方
- 切る角度
- 切った面の見方
これらの意味から、切り口は、物事(ものごと)を見たり分析したりするときの「着眼点や発想のしかた」という意味でも使われます。
そのような意味での切り口を「発想の切り口」と呼ぶことにします。それで、発想の切り口とは、次のような意味になります。
- 「発想の切り口」とは:物事を、どのように見て、どのように考えるか
このような「発想の切り口」を増やすことは、発想力のアップにつながります。
では、発想の切り口を増やすためには、どうすればよいでしょうか?
まずは、実際の切り口を増やす例を見ていきましょう。
実際の切り口を増やす例
例えば、コーヒー缶のような「円筒(円柱)形のもの」を切る場合を考えましょう。
まず図1のように、水平(横)方向に切ります。すると、その切り口(断面)は円形になります。
次に図2のように、垂直(縦)方向に切ります。すると、その切り口は長方形になります。
さらに図3のように、斜め方向に切ります。すると、その切り口は楕円(だえん)形となります。
このように同じ形(円筒形)のものでも、切り方を変える、つまり、切り口を変えるだけで、「円形/長方形/楕円形」といった3種類の断面が得られます。
タイトルのイラストは、リンゴを切ったときの断面を描いています。
このイラストでは、垂直(縦)方向に切った断面と、水平(横)方向に切った断面では、それぞれの形状は異なっています。
同じリンゴでも、切り口を変えれば、違った面(断面)が見えることを表しています。
発想の切り口を増やす方法:基本編
コーヒー缶やリンゴなど、実際のものに対して、切り口を変えれば、さまざまな面(断面)が見えることを述べてきました。
しかしアイデア発想を行うときに、実際に切るのは大変です。そのためアイデア発想では、実際に切る(切り方を変える)のではなく、「ものの見方を変える」ことができます。
基本的な方法として、「見る方向を変える」という方法があります。例えば、次のように見る方向を変えていきます。
- まず、上から見る
- 次に、横から見る
- さらに、斜め方向から見る
「いつもと同じ方向だけではなく、いつもと違う方向から見てみよう」とか、「もっとさまざまな方向から見てみよう」というように見方を変えてみましょう。
そのように見方を変えるだけで、さまざまな面が見えると思います。それまでに気づかなかった特徴が見えてくるかもしれません。
「見る方向を変えれば、そのものの、さまざまな面や特徴が見えてくる」というのは、当たり前のことかもしれません。
しかし現実には、この当たり前のことを行えないケースがあります。つまり、ものごとを「決まった方向からだけ」見てしまうというケースがあるようです。
その結果、「柔軟な発想ができない!」、「頭が固い!」となってしまうわけです。
アイデア発想を行うときには、決まった方向からだけ見てしまう習慣を避け、いつもと違う方向から見たり、もっとさまざまな方向から見るようにすれば、より多くの気づきが得られると思います。
このことが、「発想の切り口を増やすための基本」となります。
基本があれば応用もあります。
次は、「発想の切り口を増やす」ための応用編です。
発想の切り口を増やす方法:応用編
物事(ものごと)を「決まった方向からだけ見てしまう習慣」は、心理的なものといえます。そのため、そのような習慣(心理的惰性)が働いてしまうことを認識して、意識的に避ける必要があります。
しかし、そのような心理的惰性が働いてしまう理由として、「切り口が少ない」ことがあげられます。このような場合、結果(切り口が少ない)が原因になってしまっているので、少々やっかいですよね。どうすれば良いでしょうか?
このような場合は、ツールを使うことができます。
ツールとは、一般的には「道具、工具」といった意味ですが、ここでは「何かを行うときに助け(支援)になるもの」という意味で使います。
アイデア発想を行うときに助け(支援)になるツール、つまり「アイデア発想の支援ツール」として使えるのが、TRIZの発明原理です。
発明原理とは
発明原理とは、簡単にいうと「問題の解決パターンをまとめたもの」です。アルトシューラーが中心となり、膨大な特許調査などを行うことでつくられました。
多くの特許調査と研究の結果、問題の解決方法には、いくつかのパターンがあることが発見されました。その各パターンに名称をつけ、整理したものが発明原理です。全部で40のパターンがあり、40の発明原理と呼ばれています。
(発明原理に関する参考文献)
- Darrell Mann 『TRIZ 実践と効用 (1) 体系的技術革新』 中川 徹 監訳、株式会社 創造開発イニシアチブ、2004年
簡単にいえば、40の発明原理を使えば、「発想の切り口」を40増やすことができます。
また発明原理には、サブ原理があります。サブ原理を使うことで、さらに多くの切り口を得ることができます。
※発明原理やサブ原理については、以下のブログ記事をご覧ください。
発明原理の使い方
発明原理をどのように使えば、発想の切り口を増やすことができるでしょうか?
サブ原理を「切り口として使う」ことで、さまざまな切り口を得ることができます。そのことを、発明原理13の「逆発想」を例にして説明します。
「発明原理13 逆発想」は、「思い切って、今までと逆のことをしてみる」という考え方の原理です。
この原理には、次の4つのサブ原理があります。
- A:従来/通常の反対を行う
- B:固定→可動にする
- C:可動→固定にする
- D:上下を逆にする
サブ原理Aは、「従来や通常と反対のことをしてみる」という考え方です。従来や通常の方法では、ものごとが「うまくいかなく(進まなく)なっている」ときには、有効な考え方になります。
サブ原理Bから以降には、反対のことを行うための「具体的な方法」が示されています。サブ原理Bは「固定されていたものを可動にする」、サブ原理Cはその逆の「可動のものを固定にする」という方法です。
最後のサブ原理Dは、大胆な方法といえます。「上下を逆にする」つまり「ものごとの上下を入れ替える」という方法です。
これらのようなサブ原理で示される考え方や方法を、発想の切り口にすることができます。
サブ原理の適用例
サブ原理BからDでは、反対のことを行うための「具体的な方法」が示されています。最後にそれらの適用例をご紹介します。
【サブ原理B(固定→可動)の適用例】
サブ原理Bは「今まで固定されて動けなかったモノを、動けるようにする、つまり可動にする」という方法です。
「製品の組み立て作業」を例にします。
以前は、組み立てる部品は固定されて、作業者が移動していました。作業者はあちこちに移動するために疲れてしまいます。そうすると作業の効率は悪くなります。
そのため、流れ作業という方法が考え出されました。そこでは、部品が移動して、作業者は固定された位置で作業を行います。
作業者は移動する必要がなくなりますので、疲労が減り、作業効率が改善しました。つまり、「部品が固定」から「部品が移動」に変えたことで、作業効率が改善しました。
【サブ原理C(可動→固定)の適用例】
サブ原理Cは「今まで可動、つまり動いていたものを、固定にする」という方法です。
船のテストを行う際に、実際の船では大きすぎるので、船の模型を使ってテストを行うことがあります。このような「水槽試験」を例にします。
模型とはいえ、それを動かすためには、大きな水槽が必要になります。そのため水槽試験では、船の模型を固定して、代わりに水を流します。そうすることで、試験装置を小型化できます。
【サブ原理D(上下を逆)の適用例】
サブ原理Dは「ものごとの上下を入れ替える」という方法です。
「モノレールの形式」を例にします。
モノレールには、跨座式(こざしき)といって「車両が上にまたがる」形式のものがあります。
また、それとは逆の懸垂式(けんすいしき)という「車両が吊り下げられる」形式のものもあります。跨座式での「車両とレールの上下を入れ替えた」ものが懸垂式となります。
跨座式と懸垂式の両方があるので、条件やニーズに合わせて形式を選べます。
跨座式(車両が上)で不都合がある場合は、懸垂式(車両が下)にする、つまり「上下を入れ替える」という方法を行うこともできます。